移動方法の違いによる配慮ポイント

移動方法の違いによる配慮ポイント

2023/04/26

住宅相談の流れ インテークの方法 提案のポイント

身体機能別の移動・移乗方法と各部屋との関係

 身体機能別の移動方法の違いで、各部屋の使用する移動機器移乗機器の準備内容や配慮内容の違いについて下図に例を示します。

 下図の標準手すり歩行、そして杖歩行という身体機能の場合では、各部屋での手すりの位置や椅子や台の高さや配置で転倒の危険性を少なくし、生活を楽しむための安全な設計・施工が大切です。 歩行器足駆動いす車いすを使う身体機能になると、各部屋での移乗・移動動作が異なってきますから、個々の移乗・移動能力によって各部屋での住宅改造のポイントが異なります。

 自分で手動車いすを駆動できる人の移乗を考えるときは、ベッドと車いす間の移乗動作回数が最も多くなりますから、移乗動作の基本はベッドと車いす間の移乗です。 したがって、便器への移乗や浴室の洗い台への移乗環境は、ベッドへの移乗方法を参考にして決めるのが望ましいと言えます。

  玄 関 トイレ 洗面・脱衣室 浴 室 寝 室
標準
独歩
・一般的な上がり框の高さは10~30cm ・便器の高さは45cm程度 ・洗濯機上に収納棚設置 ・浴槽の高さは45cm ・ベッド、机、いす
手すり
歩行
・上がり框の高さは5cm程度に
・手すりを設置
・手すりを設置 ・洗濯機底上げ
・手すり、脱衣用台を設置
・手すり、浴槽手すりを設置 ・電動ベッド、足駆動いす
・避難用勝手口を設置
杖歩行
・移乗台を設置
・座位での靴の脱着
・便座用ひじ掛けを設置 ・引戸に取替 ・シャワーチェアを設置 ・ベッド柵、手すり設置
・避難用勝手口を設置
歩行器(車)
足駆動いす
・移動台を設置
・座位での靴の脱着
・昇降式便座を設置 ・洗面台下収納を撤去
・いすを設置
・移動台を設置 ・ベッド柵、手すりを設置
・避難用勝手口を設置
車いす
(自走)
・車いす乗換用移動台を設置
・スロープを設置
(外用車いすで入室可)
・便座横に移動台を設置 ・洗面台下収納を撤去し車いすに対応
・脱衣用台、いすを撤去
・大移動台(洗い台)を設置
・バスリフト、手すりを設置
・いすを撤去
電動車いす
介護者
・スロープ、リフトを設置
(外用電動車いすで入室可)
・便座用背もたれを設置
・トイレキャリーを使用
・洗面台下収納を撤去し車いすに対応
・脱衣用台、いすを撤去
・リフトを設置
・シャワーキャリー使用
・リフトを設置
・ベッドサイドトイレを設置

 人力介助での移乗は、介護される人の身体へ圧迫や傷を与えるというだけでなく、介助者の肉体的・精神的負担が大きく、車いすへ移乗する機会が減少するため、できれば適切な吊具を使った吊上げ式リフトを選択することが望ましいと考えます。自分で手動車いすを駆動できない人は、電動車いすで自立移動することをお勧めします。その場合は、車いすの重量と本人の体重に耐えられる様に床材を強化すること、ドアの幅を80cm以上にすること、移動範囲の段差を無くすこと、自動ドアあるいは電車いすからのコントロールで開閉するなど、ドアの開閉方法を決めて改造すること、スロープあるいは段差解消リフトの設置、長距離移動のための自動車への乗り込み方法と雨天時に濡れない乗車方法などを決めて駐車場を改造することが必要です。