ココが気になる!

高齢者って何歳から?

世界保健機構(WHO)では65歳以上を高齢者(シニア)と呼んでいますが、
日本ではさらに65~74歳を前期、75歳からを後期高齢者と区別しています。

高齢者の一般的な呼び方は、シルバー、シニア、老人、お年寄りなどさまざまですが、近年では広範囲の高齢者を指し、比較的ポジティブな印象を与える “シニア”が総称として定着してきているようです。

以下は大まかなシニア区分ですが、一口にシニアといっても、身体状況や本人の希望などで住宅の提案内容は変わります。そして確実なのは、誰もが時間とともに、より高齢化することであり、それを見越した適切な準備と提案が必要となります。

間近に迫る「2025年問題」って?

2025年問題とは、戦後の第一次ベビーブーム(1947~1949年)に生まれたいわゆる“団塊の世代”約800万人が一斉に75歳の後期高齢者となる2025年に、日本が現在の「超高齢社会」をさらに超えて、医療・福祉・雇用・財政などのバランスが崩壊することで発生が懸念されるさまざまな社会問題の総称です。

具体的には、日本では約3人に1人が65歳以上、約5人に1人が75歳以上の高齢者となることが予想され、これまでの少子高齢化の結果としての若い労働力の不足、医者や介護職員の人材不足、病院の病床数の不足、高齢者施設の不足などがあげられます。

また、社会保障給付費の急激な増大は財政を圧迫し、医療費の自己負担額増や増税を余儀なくされるでしょう。住宅需要の高い30~40代の人口も減少傾向のため、空き家が増加して不動産の需給バランスも崩れ、マンション等の価格にも大きく影響する可能性もあります。

国は医療破綻を避けるため、病床数は減らす方向であり、在宅医療や在宅介護を奨励しています。高齢者単身世帯が急増する中、外部の医療や介護への依存を最小限にするためにも、ひとりで歳をとっても、在宅で自立(律)して暮らせる住環境が必須となってきました。

私たち全員がこれからの生活を見直す時期が来たとも言えます。後悔しないためにも、転ばぬ先の杖として、常に適切な福祉機器や住宅設備などの生活環境の情報入手に努めて未来に備えましょう。

車椅子のまちがった常識?

完全に歩けない場合や、歩行を(一時的にでも)負担に感じるときは、杖や歩行器、車椅子などを使えば楽に移動することができます。

車椅子は必ずしも歩けない人や介助・介護ありきの人だけの道具ではありません。
移動や自立を支援する手段のひとつであり、今後は高齢者の足代わりとしても、もっと気軽に利用したい道具です。

車椅子には、身体寸法や身体機能、生活方法に応じた多くの種類があるので、適切な車椅子の選択と身体に合わせた各部の調整が重要なポイントです。

また、どの車椅子を選ぶかが住宅の改修にも大きく影響し、車椅子のタイプやサイズを変えるだけで事が不要になる場合さえあります。

高齢化が急速に進む中、本人だけでなく身近な高齢者たちとの快適な交流のためにも、これからの住空間のプランニングには、車椅子等の補助器具の活用を前提とした提案が不可欠です。

ペットも高齢化? ペットにもバリアフリー

大事な家族の一員であるペットも高齢化します。犬や猫の寿命も人間同様に伸び、15年以上も一緒に暮らせるようになってきています。
でも老化に伴う足腰や体力の衰えは人もペットも同じ。段差等で足を痛めやすく(脱臼・椎間板ヘルニア)、温度差への対応力も弱くなり(熱中症・ヒートショック)、住環境はペットの寿命にも大きく影響してきます。
バリアフリーは人だけでなくペットにも必要なのです。

ペットは現代病であるシックハウスの影響も受けます。化学物質やハウスダスト、ウイルス、カビなどの物質は部屋の下層に漂うため、むしろ人よりも大きく影響を受けてしまいます。

他にも日光や換気、照明の具合、固い床より滑りにくく柔らかい床材(滑りやすい床は犬猫にとって大きなストレス)など、人もペットも住みやすい環境は同じ。また、災害時はほとんどの避難所はペットNGのため、ペットのために自宅避難の環境を整える人も多くなってきています。

子供が独立して、第2の人生のパートナーとしてペットを飼うシニアも増えています。ペットと暮らすことは、精神的な癒し効果の他、散歩により運動量が増えたり、ご近所とのコミュニケーションが増えたり、ペットに話しかけたり世話をすることで、認知症の予防になるとも言われています。
飼い主にとってもペットにとっても安心して安全に生涯を過ごせる住環境を提案しましょう。

高齢者と防災・防犯

防災・防犯は高齢者夫婦だけの世帯や、高齢者の単身世帯の急増と切り離して考えることはできません。 

地震や台風、大雨など自然災害の被害は日本だけでなく世界各地で年々増加傾向にあり、地域の工務店は、高齢者世帯の防災や減災にも目を配ることが望まれます。
とっさに自力で避難することが難しい高齢者もいるため、日頃から避難ルートの確保家具の転倒防止水や食料の備蓄場所(複数)の確保等、自宅避難が可能な環境整備にも顧慮が必要です。

また、耐震補強を考える際に、2階建てから平屋に減築することで、耐震とバリアフリーの両方の効果を兼ねた方法も有効な提案のひとつです。高齢者世帯には2階に限らず、余った部屋が多いケースも多く、最低限必要なスペースを残して減築し、風通しや日当たりをよくしたり、思い切って駐車場や賃貸スペースにする手もあります。

高齢者しかいない世帯だとわかると、残念ながら犯罪行為の標的になる確率も高まるため、防犯にも十分気をつける必要があります。ご近所からの目が届かないのも不用心なため、塀は高くしすぎず、植栽やエクステリアでピンポイントの目隠しをするなどの工夫も必要。防犯カメラや人感センサー等も検討しましょう。窓ガラスの防犯フィルムは災害時も有効です。
バリアフリーと併せてこれらにも配慮し、安心・安全な生活環境を提案しましょう。