シニアと地震防災対策②
災害時における自宅避難・車中避難という選択
災害の発生時、屋外に避難するよりも自宅内に留まる方が安全な場合は自宅(在宅)避難という選択肢があります。災害発生後は屋外に出て避難所に向かうことにかえって危険がともなうこともあり、とくに移動や避難所生活が困難な高齢者にとっては自宅避難の方が有効な場合も多く考えられます。
地震でも自宅に倒壊や焼損の危険がない場合、水害でも自宅に浸水の危険がない場合などは自宅避難が可能です。その場合に備えて、保存がきく缶詰や乾燥食品を中心に、少なくとも1週間分の飲料水と食料の他、医薬品、処方薬、救急セットなども用意しておくことが有効です。
自宅避難はシニアにとって有効な選択肢となり得ますが、下記のメリットとデメリットをよく知った上で、事前の準備と計画が不可欠です。
自宅避難の注意点
■自宅避難のメリット
1.移動リスクを軽減できる
身体状況や地理上の問題により避難所への移動が難しい場合、自宅避難により移動中の転倒や怪我などのリスクが減少します。
2.住み慣れた環境で生活できる
慣れ親しんだ環境で生活することで、精神的なストレスが軽減されます。とくに高齢者は災害の直接被害による死亡よりも、避難所生活中の精神的・肉体的ストレス等による災害関連死が多いことが報告されています。
3.近隣のサポートを受けやすい
地元の介護サービスや、近隣のサポートシステムが稼働している場合は、自宅の方がそれらを利用できる環境を維持できる可能性が高くなります。
4.ペットと一緒に過ごせる
避難所では人とペットの居場所を分けられることが多く、飼い主とペット双方にストレスを強いることになるため、家族の一員でもあるペットと一緒に過ごせることが大きなメリットと考える飼い主も多くいます。
■自宅避難のデメリット
1.物資の限界
ある程度の備蓄があったとしても、自宅避難が長期化すれば、水や食料、医薬品などの供給が不足する可能性があります。
2.外部支援の遅れ
災害時に自宅に留まることで、かえって孤立して外部からの支援が遅れる可能性もあり、その場合は自力での対応が求められることになります。
3.インフラの途絶
道路が通行不能な場合や、停電、断水、通信障害が発生した場合、より孤立した状態となって慣れ親しんだ生活を維持することは困難になります。
災害の発生直後は無事であっても、余震や火災などによって自宅が被災する可能性がある場合は避難所に避難が必要です。自宅付近にはどんな災害のリスクがあるかもハザード・マップ等で事前に確認しておきましょう。
車中泊による避難
災害時に避難所が満員だったり、自宅に戻れない場合、自宅避難が危険な場合には一時的な避難手段として自家用車を避難先として利用する車中泊が考えられます。現在、大規模災害時の避難所の数は人口に対して著しく不足しているため、大きな余震が続いた2016年の熊本地震以降、とくに車中泊避難が注目されています。
しかし、車中泊にもやはりメリットとデメリットがあるため、それらを知った上で適切な避難手段を選ぶことが必要です。
■車中泊のメリット
道路が通行可能であれば移動もできるしエアコンなどもあるため、それなりの食料と水などの物資があれば、短期間はある程度の快適性も確保することも可能でしょう。
1.プライバシーの確保
多くの人々とスペースを共有する避難所ではプライバシーが著しく制限されます。とくに乳児や小さな子ども、高齢者、ペットなどがいる場合、避難所生活は非常に気を遣うこととなりますが、車中泊避難だとプライバシーを確保しつつそれらのお世話ができることが大きなメリットと言えます。
2.感染症のリスク軽減
生活環境が密になりやすい避難所に比べると感染症のリスクから身を守れます。
3.貴重品等の管理
車内に私物の貴重品や物資を保管できるため安心できるメリットもあります。
■車中泊のデメリット
災害直後は車での移動は危険な場合も多く、土砂崩れや水害で車に閉じ込められる危険もあるため、まずは車に被害が及ばない安全な駐車場所の確保が車中泊の前提となります。
1.エコノミー症候群
車中泊のデメリットで代表的なのは、長時間狭い場所に同じ姿勢でいることで血行不良を起こしエコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓症)になるリスクが高まることです。
2.酸欠や一酸化炭素中毒の危険
十分な換気をせず、窓を閉め切ってエアコンやエンジンをかけっぱなしにすることで、酸欠や一酸化炭素中毒の可能性が高まり、とくに小さな子どもや高齢者には危険です。
3.長期化によるその他の問題
避難が長期化すれば燃料や物資の補充も難しい場合、移動はもちろんエアコンやライトも使えなくなります。トイレや入浴など衛生面の問題もあり、とくに狭い場所での複数人の生活は精神的ストレスも溜まります。
基本的には、エコノミークラス症候群等の予防として1日中車内で過ごさないようにして軽めの運動をし、日中はなるべく外に出て、寝る時だけ車内を利用するなどの注意が必要です。
災害の状況や避難する人の身体状況などに応じて、避難所への避難、自宅避難、車中泊避難など最適な避難方法を選ぶことが必要です。
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