ペットと防災
人とペットの災害対策


ペットと住んでいる家庭は常に一定数存在しますが、超高齢社会の現在、ペットが唯一の大事な家族であるシニアも少なくありません。我々が住んでいる日本は数年ごとに大きな地震に見舞われている地震大国であり、その他の自然災害も年々増加傾向にあります。災害発生時には飼い主とペット双方の安全な避難行動や避難生活ができるよう、普段からの心構えや情報収集、事前の住環境の整備などが必要です。

まずは市町村のホームページや『地域防災計画』などを検索し、最寄りの避難所がどこか、そこが「同伴避難」を受け入れ可能かどうかを事前に確認しておく必要があります。


「同行避難」と「同伴避難」
●同行避難(どうこうひなん)
ペットと安全な場所に一緒に避難することであり、避難所内でペットと一緒に暮らすこと(同伴避難)ではありません。
ペットが理由で避難できないと飼い主の安全を脅かすことにもなるため、環境省では「同行避難」を推奨しています。
日頃から、ペットをしつけ、キャリーバッグやクレートに入れて移動することに慣れさせておくこと(小型犬・猫のためのリュックタイプのキャリーバッグも避難時には両手が使えて便利です)や、どのようなルートで逃げるか考えておくことが大切です。離れ離れになったときのために連絡先の書いた迷子札や首輪なども必要です。自治体によってはペット同行避難訓練を行うため参加するのもよいでしょう。
ただし「同行避難」できても、避難所がペットを受け入れてくれるかどうかは別のため注意が必要です。
避難所の数は全国的に不足しており、ペットを収容するスペースも足りません。また、避難所にはペットの鳴き声や臭いが苦手な人や動物アレルギーの人もいます。阪神大震災や東日本大震災では、飼い主がペットを連れて避難所に入ることを断られたケースも多々ありました。いざというときに、ペットを預かってもらうことが可能な知人や施設を事前に探しておくことも必要です。
●同伴避難(どうはんひなん)
同じ避難所でペットと人が過ごすことです。しかし、「同伴避難」を受け入れていない避難所もあります。「同伴避難」を受け入れている避難所でも、連れて行けるペットの種類は自治体や地域によって大きく異なるため事前の確認が必要です。また、ペット専用コンテナに隔離するなど、必ずしも人と同じ空間で過ごせるとは限りません。
避難所の避難生活は、人にもペットにも大きなストレスとなり、どちらも体調を崩しやすくなるため健康管理も重要です。また、犬の場合は予防接種済票が必要な場合もあります。
ペットのためのスペースは確保されてたとしても、避難所は人間中心のため、ペット用の食料や支援物資は期待できません。ペットの食料や水など命にかかわるものは飼い主の責任で1週間分ほど備蓄しておいた方がよいでしょう。
また、初めはペットの同伴に寛容な他の避難者も、時間の経過とともにストレスが溜まりお互いに険悪な雰囲気になることがあります。避難所ではルールを守って生活し、ペットが周囲の人に迷惑をかけないようにするのも飼い主の責任です。
同伴避難できない避難所ではどうするか、基本的には各自治体の指示に従いましょう。車が無事な場合は、一時的な車中泊なども考えられます。
避難生活が長引くことが想定される場合には、遠方の親族や友人など信頼できるペットの預け先を探す(「分散避難」)も検討しましょう。
車中泊をする際は、夏以外でも日中の車内の温度はかなり上昇し、クーラーをつけていても気温が上がるため、ペットは熱中症に要注意です。水をしっかり与え、窓を開けて換気し、ペットだけを車内に残すことはなるべく控えましょう。また、車中泊が長期化する場合、人はエコノミークラス症候群(血行不良により発症するさまざまな症状)に要注意です。
「自宅避難」と「分散避難」
以前は、災害が起きた場合はまず「避難所に避難」が前提でしたが、昨今では、災害の種類や自宅の環境によって対策の考え方が変わってきました。
自宅の建物の構造が強固で被害を受けにくい立地の場合は、外に出て事故に遭うリスクを負うよりは、事前の備えは必要ですが、自宅でしばらく様子を見たり、自宅に残った方がよい場合もあります(「自宅避難(在宅避難)」)。
また、大雨や台風など発生時期が予測できて、避難指示解除までが短期間で済む避難の場合は、安全な場所にある親類や知人の家に事前に避難しておく、またはペットは動物病院やペット専用の宿泊施設に預け、飼い主はホテル等に宿泊避難するといった選択肢も考えられます(「分散避難」)。
●ペットとの「自宅避難」の注意点
いわゆる自宅の耐震化や家具の転倒防止、避難ルートの確保によって危険を回避するのは人もペットも同じです。ペットも家具の下敷きになったり、家具が倒れて割れたガラスでケガをします。ペットの居場所の周りに落ちて当たると危険な物は置かないようにしましょう。
また、災害時に飼い主が留守中でも、ペットが本能的に逃げ込める安全な隠れ場所(緊急避難場所)があると安心です。普段からペットが落ち着ける場所として機能している場所が理想的です(押入れの下や強固な家具の下、丈夫なサークルやケージ、クレートなど)。
ペットが自分から好んで入る場所である必要がありますが、家具が倒れて出入口を防ぐなど逆に閉じ込めてしまうことがないよう注意が必要です。
(犬は外が見えると吠えて落ち着かないため、外部に接していない場所に配置しましょう)。
⇒ ペット共生とバリアフリー
⇒ 自宅避難と車中避難の注意点