交通事故より多い家庭内事故①
家庭内事故の予防こそ急務!
本来、自宅は誰もが心身ともに最も安心できる場所のはずであり、また、住宅の基本的な役割は、住む人の命の安全と病気・ケガから守ることだと言えます。ところが近年、シニア世帯が急増する中、多くの高齢者が家庭内の事故で大ケガを負い、また、その事故が原因で要介護となったり、最悪の場合は死に至るケースが急増しています。

●高齢者の家庭内事故死は交通事故死の約4.5倍
厚生労働省の「人口動態統計」(2023年)によると、家庭内事故で亡くなった人は年間約1万6千人です。これは同年に交通事故で亡くなった人約3千5百人の4.5倍であり、そのうち65歳以上が約9割を占めています。
超高齢社会の真只中にある日本では、家庭内事故のリスクを減らすことが重要なテーマであり、バリアフリー住宅や住宅改修はますます需要が高まってきています。
●介護離職者は年間約10万人
介護は本人だけでなく介護する側にとっても大きな負担となります。要介護(要支援)認定者の数はこの10年でどんどん増え、家族の介護のために会社を辞める介護離職者の数も約2倍(年間10万人)以上です。
歳をとればとるほど、要介護に直結する家庭内事故のリスクが高まるため、できるだけ早くから要介護の予防が必要です。
また要介護の時期をできるだけ遅らせ、介護期間を少しでも短縮することが、介護負担の軽減にもなります。

地域の工務店やビルダーは、家庭内事故の予防こそが “転ばぬ先の杖”となって住まいの価値を高め、信頼性や差別化にも繋がり、それが社会貢献と同時にビジネスチャンスにもなり得ることをしっかりと理解しましょう。
事故の発生場所
●事故現場は外出先より家の中!
家庭内事故による高齢者のケガや死亡が増える一方ですが、事故全体を見ると高齢者に限らず外出先よりも住宅内の事故が圧倒的に多という結果が出ています。
65歳未満も以上も全体の7割を超えており、65歳以上の高齢者の数がややいという現状です。今や最も危険な場所は家の中と言っても過言ではありません。
●事故多発現場は家のどこ?
住宅内の事故を場所別に見てみると、65歳未満と以上ともに事故が最も多く発生する傾向にあるのはリビングです。65歳以上では、次いで階段、DKの順です。
家庭内事故の9割が転倒・転落ですが、誰もが安心してくつろげる場であるはずのリビングの事故発生率が最も高いのは重要なポイントです。リビングは癒しの場であるとともに、滞在時間が長く誰もが一番油断しやすい場所とも言えるわけです。
また、事故の件数は他と比べて少なくても、死亡率が最も高いのは浴室で、ヒートショック等で年間約1万9,000人が命を落としており、その多くが高齢者です。これらのことからも家庭内の危険を減らすニーズがいかに高いかがわかります。
●日本の家屋は段差だらけ
日本の家屋は外国の住居と比較しても思いのほかたくさんの段差があります。
高温多湿の日本では地面からの湿気を避けるために玄関やアプローチに段差を設けたり、和室と洋室があるために畳とフローリングの高低差が生じたりと、日本の気候・家の構造・習慣がこれら段差が存在する主な理由です。
しかしこの段差が家庭内事故で最も多い「転倒」の要因であり、小さな子供や妊婦、高齢者の他、最近ではペットのケガや骨折の原因にもなっています。
とくに高齢者は若い頃に比べると視力や足腰の筋肉が衰えてくるため、小さな段差でも足を引っかけて転倒しやすくなります。また、転倒してしまうと若者と高齢者では受けるダメージも違い、たった1回の転倒でも骨折や頭部打撲などの大ケガをすると若い頃のように回復しないため、寝たきりや要介護になってしまうことさえあります。
【家の中の主な段差】 〈対策例〉
●玄関の上がり框:家の中では靴を脱ぐ習慣のある日本ならでは ⇒踏み台・手すり
●階段:古い家は急な階段が多い。転落につながり大きな怪我に ⇒手すり・足元灯
●部屋や廊下の間仕切り:小さな段差ほど見落としがち ⇒スロープ(すりつけ板)
●浴室の出入り口:脱衣所への湯水流出防止ための高低差 ⇒グレーチング・すのこ
●カーペットの端等:わずかな段差でも足をとられて転倒 ⇒専用テープで固定

工務店としての役割と価値の提案
家庭内事故の予防対策は、工務店として顧客の住まいの安全性を高めるだけでなく、地域住民の生活の質を向上させます。また、こうした取り組みが、結果として工務店の信頼性アップやリピーターの獲得につながることになります。
工務店として、住まいの安全を追求することは、地域社会に貢献するだけでなく、自社のブランド力や競争力アップの絶好の機会でもあることを十分に認識し、安心・安全なプランを提案しましょう。
<顧客への提案例>
●「家庭内事故予防プラン」や「安全シニアプラン」などのパッケージ化
●「家庭内事故ゼロを目指すリフォーム専門店」などのブランド化
●「安全・安心・自立」を強調したビジュアルをパンフやHPで訴求
●「高齢者の転倒リスクを減らしたプラン」や、
「ヒートショック対策をした浴室・トイレ」などの具体的事例紹介
●「家庭内事故リスク無料診断」など訪問サービスの実施
(例)□玄関アプローチの段差は安全か?
□玄関の上がり框の段差は安全か?
□階段は急? 手すりは両側にあるか?
□床は滑りやすくないか?
□つまづきやすい場所はないか?
□冬場は浴室やトイレが寒くないか?
□浴室・脱衣所・トイレに手すりはあるか?
□家の中に暗い場所はないか?
□寝室からトイレが遠くないか?
□将来、要介護になる心配はないか? etc.

「人生100年時代」の今、シニア世帯やシニア独居世帯は今後も増える一方です。地域の工務店は家庭内事故予防をテーマにしたバリアフリー住宅や住宅改修サービスを提案し、より多くの顧客に安全で快適な住環境を提供しましょう。目指すは介護したりされたりしなくて済む「安全」と「自立」の家です。
また、シニア世帯にとって問題は家庭内事故だけではありません。昨今は高齢者を狙う凶悪な犯罪やさまざまな自然災害も増加傾向にあり、防犯対策や防災対策も必須です。ペットとの快適な生活を望むシニアも増えていますが、ペットも高齢化し、家庭内でケガをしたり病気になります。これらの環境に配慮した提案が地域社会への貢献となり、工務店の価値の向上にもつながることを十分理解することが必要です。